アルファ世代は「広告→検索→購入」を通らない(CEOブログ)

ファネルを改善する前に、ファネルが残るかを疑う

マーケティングの議論は購買ファネルの改善に集まりがちですが、アルファ世代に対しては前提から見直す必要があります。彼らは、広告で知り検索で確かめ一度買って終わる、という30年続いた買い方を一度も通らない最初の世代になります。本稿はその中身と、企業への含意を扱います。データは実測、将来の見立ては推測として区別します。

客になるのは2030年代

アルファ世代は2010〜2024年生まれ。可処分所得を持つのは2030年前後、主要購買層になるのは2036年前後です。今は売る相手ではなく、買い方の前提を身につけつつある層として見るのが妥当です。

検索を通らない:入口がAIとの会話へ

発見の入口が検索からAIとの会話へ移ります。AdobeのデータではAI経由の買い物客は人間より42%高く転換し、AI流入は前年比393%増。Morgan Stanleyは2030年までに米国EC市場の3850億ドル分がAIエージェント経由へ移ると予測しています。今は全世代のデータですが、これを当たり前として育つのがアルファ世代です。企業の論点は、SEOからAIに薦められる情報の整備(エージェント可読性)へ移ります。ここは推測を含みます。

広告を通らない:関係が動機になる

購買のきっかけが広告から関係へ移ります。Common Sense Mediaの2025年調査では、米国ティーンの72%がAIコンパニオン利用経験、52%が定期利用。推し、クリエイター、AIキャラクターとの一方向の関係、すなわちパラソーシャルな関係が動機になります。広告を大量に見て育っていないため、広告への信頼が前提として薄い世代です。

所有を通らない:少額の継続課金が当たり前

買う形が一度きりの所有のための購入から、利用のための少額の継続課金へ移ります。縦型ショートドラマ(ReelShort、DramaBox)は最初の数話が無料、続きはコイン購入で解錠する形で、世界のアプリ内課金は2025年Q1で約7億ドル、前年同期の約4倍。少額課金を繰り返す支払い方が定着していることの一つの実例です。

残る一点:決済の自動化はまだ手前

「全自動でAIが買う」状態にまでは、まだしばらくはならない模様。OpenAIはChatGPT内の即時決済を一時停止し、Walmartはチャット内購入の転換が自社サイト誘導の3分の1でした。発見と比較はAIへ移っても、最後の決済は人が握っています。この区別を外すと判断を誤ります。

逆に上がるもの:現実の体験

発見と関係がオンラインへ寄るほど、現実に人が集まる場の希少価値も上がります。ライブ、イベント、直接の接触。画面で完結しない体験が高く売れる傾向が強まりそうです。オンラインを攻める企業ほど、オフラインの体験も用意する意味がありそうです。

時相:三期で見る

第1期2026〜2028年は入口がAIとショート動画へ移る局面(実測)。第2期2029〜2031年は関係・少額課金・体験が経路として定着する局面(推測)。第3期2032〜2036年はアルファ世代が可処分所得を持ち主要購買層になる局面(推測)。入口で反応データを安く取得し、関係と体験で回収する順番がポイントです。

日本市場への含意

ここまでの数字は米英・グローバルが中心で、ショートドラマアプリやTikTok発コマース、Robloxの日本浸透は、相対的には未だ低めです。故に、海外傾向の直輸入は読み違いを生みかねません。一方、日本発コンテンツの海外売上は2024年に6兆円超、政府は2033年に20兆円目標。アニメ海外市場は2024年に2兆1,702億円となり初めて国内を上回りました(前年の約1.26倍)。日本の事業者は海外で先に立ち上がるアルファ購買層に、日本IP関連を売り込む余地は大きい。プラットフォームの自作より、IPと配信・関係・体験のサイドに足場を築くのが現実的です。

リスクの見立て

未成年向けAIの規制と評判(Common Sense Mediaは18歳未満の利用自粛を勧告)。プラットフォーム依存(Robloxの年齢確認が現に利用者の伸びを削った)。海外傾向の日本への直輸入による読み違い。IP会話化に伴う権利処理(声優・原作者・製作委員会の許諾)。この四点を組み立てに織り込めるかが分かれ目になります。